山上でのご来光が、急に見たくなりました。山の選定となると、まず東面が大きく開けていること。近くに山小屋が無いこと。小屋泊まりの登山者でワイワイガヤガヤされていては、ご来光の神秘もだいなしです。
日帰りで山頂でご来光を拝むとなると、夜間の登山をしなくてはなりませんので、勝手知った山であること。さらに紅葉も楽しみたいとなると、真っ先に思いついたのが燧ヶ岳です。早速カシミール3Dで日の出時刻を調べると、5時42分頃。御池駐車場から俎グラ山頂まで3時間弱ですが、夜行登山となると30分や1時間の余裕は欲しいところです。となると午前2時頃には出発しなければならず、これでは起きるのが辛いので熊沢田代でご来光を迎えることにしました。熊沢田代も東側が開けていますし、行程も一時間短く日の出時刻も8分ほど遅くなります。それに池塘に映る日の出の太陽も、見られるのではないかと思ったからです。
前夜9時半に御池到着。時折雷光が、星空を白くする。セブンイレブンの牛カルビ串(おいしかった)で一杯やってから、11時頃就寝。午前一時過ぎ、雨の音で目覚める。午前2時50分、目覚まし時計の音で目覚めると、下限の月が煌々と輝いていた。準備中に再び小雨が降り始め、雨具を着ての出発となった(3:25)。
高照度のヘッドランプを点けても、深いガスのため視界は10mもない。突然、不思議な感覚に襲われた。子供の頃の遠い記憶が蘇り、夏休みに出かけた田舎の学校の校舎が私の右側に出現した。ライトをそちらに向けても闇から木々が浮かびあがるだけである。進行方向を向くと、再び学校が私の脇にまざまざと現れるのである。ただの気のせいであるが、普段はこうした気のせいは起きない。
出発後1時間足らずで広沢田代に到着。湿原は闇の中で、木道に待避所があることから、ここが広沢田代であることが分かった。小雨はみぞれに変わった。
あたりが仄白くなる頃、熊沢田代に到着。出発からちょうど2時間だった。手がかじかんできたので、ツエルトを被りコンロで暖をとりながら、日の出時刻(5:50)を待った。
残念ながら、濃霧のためご来光を見ることはできなかった。6時少し前、ここを後にした。家に帰ってから、環境省のライブカメラで日の出30分後の映像を見たところ、山頂付近もやはりガスに覆われていた。

夏でも小雪渓が残るあたりから、登山道は雪道となった。夜間山頂付近は雪だったのだろう。霧が一気に晴れ、足取りも軽くグングン登った。
6:50、俎グラ山頂に到着。この圧倒的な大景観を独り占めである。
柴安クラ山頂から少し西に下り、風の避けられるところで食事した。眼下には尾瀬ヶ原が広がっている。下るにつれ、次々と登山者と出会った。「ずいぶん早いですね」「何時から登られました」と一様に聞かれた。彼らもかなりの早立ちをしていたのであろう。
人影のない尾瀬ヶ原。なんという爽やかさだろう。すぐには立ち去れず、竜宮まで散策した。
再び見晴に戻り、沼尻に向って歩き始めた。段小屋坂を過ぎ最初に現れる湿原が白砂田代である。池塘は空の紺青を写し、喩えようもないほど美しい。
紅葉のピーク時を過ぎてしまったせいか、尾瀬沼池畔も意外なほど人影が少なかった。
大江湿原で燧ヶ岳に、感謝の念を告げた。
12時50分沼山峠に到着、1時発のバスで御池に戻った。もっとゆっくりしたかったが、今回はもう一つ目標がある。渋滞する高速道路を使用しないで、抜け道を使って横浜の自宅まで帰るつもりである。未知の抜け道は明るい内に通りたかったので、尾瀬散策は駆け足になってしまった。