平ヶ岳は以前尾瀬から山スキーで往復したことがあります。しかし平ヶ岳の真価は池塘群の出現する時期にあります。
平ヶ岳には、山小屋がありません。その代わりなのでしょうか、キャンプ地が指定されています。静かな山とテント泊が好きな私にとって、これは最高の条件がそろった山です。こうした格別の山は格別の日に登りたいと常々思っていました。格別の日とは登山者の少ない平日のことですが、平日に山に行くことができるのは、私にとって年に2、3日しかありません。そんな貴重な一日を費やして登山ですが、天気予報は初日、二日目とも曇と雨マークばかり。降雨を覚悟しての出発となりましたが・・・。
平ヶ岳登山口は御池から小出方面へ約14Km、標高は六百数十mも下ったところにある。今日はテント泊なので、ゆっくり支度していると、日帰りと思われる登山者が数名出発していった。私は5時55分登山開始。
平ヶ岳は強行だが日帰り登山可能である。しかし、山上に幕営地が用意されている平ヶ岳は、幕営する以外私には考えられない。山の最も美しい瞬間は、日没と日の出にあるのだから。
下大倉山まで2時間、汗だくになって登り続けた。ガスで展望は得られなかったが、雨が降らず幸いであった。雨具など着込んだら、暑さバテしてしまいそうである。
下大倉山で霧から抜け出すと、我が目を疑う展望が広がった。青空の下、燧ヶ岳が、また会津駒ケ岳が雲上に浮かんでいた。私はやっぱり奇跡の晴れ男なのかもしれない。
下大倉山から大倉山へは、起伏の緩やかな稜線が続いた。雲は多目ながら、意気も上がり爽快な稜線漫歩となった。
大倉山から少し下った後は、かなり長い間樹林帯を歩くことになる。起伏の少ない楽な道で、どんどん距離を稼ぐことができた。樹林帯を抜けると、視界が開け正面に池ノ岳が見える(左)。ここから池ノ岳まで、大汗流す2回目の急坂道となるが、一息の距離であった。
池ノ岳は北-東-南側が大きく開け展望がすばらしい。ご来光を見るのにもよさそうである。
2分ほど平坦な木道を進むと、不意に美しい湿原が現れた。月並みな表現だが雲上の楽園と謂うにふさわしい。
左は姫ノ池。
ここで木道は平ヶ岳方面と玉子石方面の二手に分かれ、キャンプ指定地のある玉子石方面に向かった。
3、4分ほど歩くと再び指導標があり、左が平ヶ岳、右が玉子石とある。付近に砂礫地があり、そこに幕営した形跡があった。指定地とも何も書かれていないが、幕営地はここに間違いないだろう。腕時計は11時30分を示していた。
お花畑に囲まれたキャンプ指定地から平ヶ岳を望む。あとから幕営に来る人に備えて端っこに設営したが、この日幕を張ったのは私だけであった。今回は行程に余裕があるので、二人用テントを持参した。快適な幕営地でゆったりキャンプが楽しめる。
水場は平ヶ岳方面へ少し下ったところにある。心もとない水量であった。ただ湿原に湛えられた水が、少しずつしみ出してくるので、湿原がある限り涸れることもないのだろう。
水場付近も幕営した形跡がみられた。ここも数張り可能。
幕営地で昼食を摂った後、平ヶ岳に向かった。山頂まで30分ほどである。途中の樹林帯で単独行の男性と出あった。その人を最後に、平ヶ岳は私独りとなった。
平ヶ岳の山頂は、三角点が無ければ分からないほど、広々している。木道は三角点から先もしばらく伸びていて、ここで終点となる(左の写真)。この先は植生保護のため通行禁止となっていた。
以前山スキーで訪れた時は、平ヶ岳山頂と書かれた貧弱な棒が一本、だだっ広い雪原に立っていた。あそこはどこなのだろう。おそらく、この先のような気がする。ただ大白沢山に至る稜線は雲に覆われ、確認することはできなかった。
誰もいない私だけの平ヶ岳。靴を脱ぎ、靴下まで脱ぎ、木道の上で横たわった。広々とした草原と池塘郡のただ中で、コーヒーを入れ、二時間近くもの間くつろいだ。平ヶ岳山頂を長時間独占する喜びは、日帰り登山では得難いものであろう。
霧が一帯を支配したため、幕営地に戻ることにした。テントまであと50mというところで、ザーと音をたて雨が降り始めた。
小一時間ほどで雨は上がり、再び青空が垣間見えてきたので、玉子石まで行くことにした。
玉子石に至る木道沿いも美しい湿原が広がっていた。玉子石の下方に湿原が見える。踏み跡があり誘われそうになったが、正規の登山道ではないだろう。踏み跡を広げれば、あとから来る登山者が増え、湿原は荒らされることになりかねない。私はここから眺めおろすことだけで、満足することにした。
霧はしだいに深くなり、夕闇が迫る頃、再び雨が降り始めた。
雨は一晩中降り続けた。ラジオの天気予報は、曇り時々雨。濃霧でなにも見えず、楽しみにしていた平ヶ岳山頂でのご来光も諦め、テント撤収後下山することにした。
雨が小降りになった時を見計らい、雨具を着込んで撤収作業を開始した。視界は相変わらずだが、幸い出発時に雨は上がり、登山口まで降られることは無かった。
白沢清水。ただの水溜りといった感じで、飲む気がしなかった。
私の持っているゼンリンの登山地図には大倉清水付近も幕営地のマークがあったので行って見たところ、2〜3張りくらいは張れそうである(左)。
水場はここから下ったところにある。ぬかるんだ急斜面に踏み後があったが、なんとゴミが散乱していた。ガスカートリッジの空き缶もいくつか見える。ここに野営した連中の仕業だろうか。ゴミを捨てていくとは、最低レベルの登山者。私が現場を目撃したら、胸座つかんで谷底に放り投げ、山のゴミにしてやるから、ゴミを捨てる奴は覚悟しておいて欲しい。
一人で怒っていても仕方無いので、自分のゴミ袋がいっぱいになるまでゴミを詰め込んだ。しかし、ゴミはまだたくさん残っている。
展望が開け、曇天ながら壮観である。ここで平ヶ岳山頂を向いて一礼、別れを告げた。
大倉山から下大倉山に向かって下る。
今日は8月最後の土曜日。スッキリしない天気にもかかわらず、次々と登山者が上がってきた。といっても全部で15名程度であろうか。うち、2パーティ4名は幕営のようであった。
右下に小さく「軽装で登り6時間30分、下り4時間30分」と書かれてある。私は幕営地まで、登り5時間35分、下りは5時間20分だった(いずれも休憩込み)。何故か登りも下りもほとんど同じ。登りはコースタイムより速かったが、下りは途中でのんびりしすぎたようである。
勉強ができなくても、金で学校に入る裏口入学があるように、安直な裏口ルート(中ノ岐林道コース、別名皇太子ルート)が平ヶ岳にはあるそうです。山の神聖を汚しているようで、残念です。