丹沢山塊は横浜に住む私にとって、一番近い山域です。登山再開後、弱った足腰を鍛えなおすためにも四季を通し、塔ノ岳を中心にたびたび訪れました。再開後は沢登りは行わず、もっぱら尾根歩きのため少々飽きてきましたが、それでも冠雪した丹沢には新鮮な美しさがあり、冬場は必ず何度か訪れます。ところが冬真っ只中の丹沢の南斜面は、雪の片鱗も見えない様相でした。やはり今年も異常気象なのでしょうか?
大倉バス停付近は深い霧に包まれていた。三ノ塔方面は風の吊り橋を渡り、階段を登ったところの道を左に進む。約一時間の林道歩きから始まった。
林道から登山道に入り、三ノ塔尾根をしばらく登ると、ガスの上に抜け出した。山上での展望に期待が膨らんだ。
主稜線を一望できるところで唖然とした。全然雪がない。
今日の私の昼食は、コンビニで買った冷凍鍋焼きうどんと、パスタ入りのカップスープである。いずれも水が必要だが、水は雪を融かすつもりでいたので、持参してこなかった。350ccのテルモスには熱いミルクティーしか入っていない。これも雪で薄め、量を増やして飲むつもりでいたので、濃く甘く作ってきたのである。
これ以外にも、正月山行で開封して以来いっこうに減らない乾パンと、カロリメートなどの非常食はあるが、どれも喉が渇きそうなものばかりである。水不足が心配になり、汗をかかないようペースを落として登ることにした。

三ノ塔から冨士と箱根の山を遠望する。
丹沢のピークの中で、三ノ塔からの景色が一番好きだ。広々として雄大、今日もすばらしい大展望である。
水の得難い稜線上の小屋では、水は売っていない。水だけ売るのは割があわないため、付加価値をつけてお茶やコーヒーなどにして販売しているのだ。しかし、これじゃあ私の昼飯が作れない。景色も楽しんだし、そろそろ川原まで下り、めし食って帰ろうかと懊悩する(私の悩みは底が浅い)。塔ノ岳から丹沢山方面に眼を凝らすと、小さいながら雪の斜面が見えた。塔ノ岳まで行けば、北斜面に雪は残っているだろうと思われたので、山行を続行することにした。
鳥尾山荘に向かって下り始めると、三ノ塔の北斜面にもところどころ雪が残っていたが、とても飲用できるものではなかった。登山道は雪が踏み固められ凍結していて、ツルツル滑る。アイゼンが必要なほどではないが、こけないよう慎重に下った。
行者岳付近のクサリ場付近。
無風快晴。暖かいというより、暑い。丹沢とはいえ、本当にこれが厳冬期の山かと思う。3月、4月を通り越して5月か6月の山を登っているみたいだ。
腕まくりをしていても、汗が流れ喉はカラカラ。貴重な濃縮ミルクティーで口を湿らしても、甘過ぎてますます喉の渇きは増すばかりである。乾パンなどは食べる気もおきず、少々シャリバテ気味になってきた。
新大日で飲用可能なきれいな雪面を見つけ、アイスミルクティーにして飲み、ようやく一息つくことができた。飲むと体に水分が補給されたためなのか、30秒もしないうち、汗がじわっと噴出した。
塔ノ岳山頂。
いつも大勢の人で賑わう塔ノ岳は、好天にもかかわらず、意外と人が少なかった。飛び石連休を利用して、もっと遠くの山を登っているのだろうか。休みをとれる人が羨ましい。
丹沢山塊では海洋気象の影響を受けるせいか、すっきりと晴れる日は意外と少ないものである。塔ノ岳山頂でこれほど鮮明な冨士を眺望したのは久しぶりである。
(左)塔ノ岳山頂より、丹沢山・蛭ヶ岳方面。
鍋割山に到る尾根の北斜面には、意外と雪が多く見られた。あちらの方が静かなので、昼食はもう少し我慢することにして出発。
大倉尾根は登山者の往来が非常に多く、あまり通りたくない登山道である。金冷シから鍋割山に進路を変えると、静かでのどかな雰囲気になった。
二股分岐近くで、腰をおろして待望の食事にありついた。やれやれ、やっと元気がでてきた。食後のほうじ茶は500cc以上も飲んだろうか。
鍋割山荘に着くと、風になびく「名物鍋焼きうどん」の旗が、真っ先に眼に入った。はじめからここで鍋焼きうどんを食べるよう計画しておけばよかったのである。ここの鍋焼きうどんは具が豊富で大変おいしいとの評判である。
ここ後沢乗越から下は暗い杉の植林帯になるも、少しの距離で林道にでる。二股で靴とスパッツの泥を荒い流し、大倉のバス停を目指し、夕暮れの林道を歩いた。