先週三頭山に出かけた際、車のラジオ放送で北日本各地の大雪を報じていました。聞き間違いがなければ、桧枝岐村では、一日で84cmもの降雪があったそうです。以前から冬の尾瀬をいちど訪れてみたいと思っていましたが、厳冬期は無理。雪の深くない11月下旬から12月上旬を考えていたのですが、今年は冬がひと月早くやってきたようです。
さて今回は、雪上歩行のためのギアにスノーシューを使用することにしました。このスノーシューは、いつか雪山を歩きたいと言っていた娘にプレゼントしたもので、未使用の新品。サイズは一番小さいもので、たしか総重量65Kgまでと記載されていたように思います。テントを背負った私の場合は完全に重量オーバーですが、ワカンよりも浮力がありそうだったので、娘の了解を得て使用(試用)してみることにしました。
私も初体験のスノーシュー、今回の山行で大活躍となりました。つぼ足でラッセルしたら、尾瀬沼まで到着できなかったかもしれません。今回は天候にも恵まれ、初日は誰一人出会わず、終始トレースのない白無垢の尾瀬を、わがものにする喜びを感じることができました。
大清水の駐車場の入り口は、道路を除雪した雪で一段高くなっていて入れなかった。冬季休業中の小屋の前のスペースに車を置いて、6時20分出発。
車止めのゲートを通過し雪道になると、つぼ足のトレースがあった。ラッセルが軽減されると意を強くしたが、ぬか喜びだっだ。5分も歩かないうちにトレースは消えてしまった。ここで引き返したようである。
つぼ足だと膝下まで沈むので、さっそくスノーシューを装着した。ほとんど沈まず、快調に進む。
一之瀬休憩所。休憩所というからには、休まなければならない。今回は、なにやかやと休憩が多い山行になった。
ここに至る林道で、熊の足跡を2度見つけた。時ならぬ大雪のため、えさを求め里近くまで降りてきているだろう。
2本のストックをカチカチたたいたり、わざと咳をしたり、音をたてながら歩いた。
尾瀬のように木道の多い登山道は、木道と木道の間を踏み抜いてしまうことが何度かあって難儀した。またこのスノーシュー、特価品のせいでもあるまいが、よく外れてしまう。装着しなおすたびに休憩するのでなかなか進まない。
10時50分、三平峠到着。大清水から4時間半もかかってしまった。
尾瀬沼山荘に向かって降り始めると、樹木の間から尾瀬沼がかいま見えてきて、興奮した。
ここの降りは、スノーシューを履いていても30cmくらい潜る。
尾瀬沼山荘から尾瀬沼を時計回りで一周すべく、沼尻に向かった。樹林帯はスノーシューで15cm前後沈む。沈むたび雪がスノーシューにかぶさり、持ち上げる足が少々重い。
尾瀬沼の凍結部分は全体の2〜3割くらいだろうか。凍った湖面上は、雪に覆われた木道上を歩くよりずっと楽なので、尾瀬沼の岸沿いに氷上を歩いた。
倒木のあったところで一帯がミシミシ音をたてたので慌てて陸に戻る。再度氷上に戻るが、ついにバリッと氷が割れた。すかさず陸にジャンプしたが片足が一瞬水没。スパッツをしていたため靴下は濡らさずに済んだ。
懲りずに、氷が厚くなったところで再び氷上にもどった。
(左)沼尻の少し手前から、燧ヶ岳を望む。
尾瀬沼の北岸は、日当たりが良いせいかほとんど凍結していなかった。
あの稜線のずーっと彼方、今ごろ私の娘も自然愛好会の月例山行で奥多摩を歩いているはずだ。
浅湖湿原より長蔵小屋を遠望する。夏ならばニッコウキスゲの群生が美しいところである。
大江湿原にて
長蔵小屋の少し手前で、足元が崩落。木道の間に両足とも落ちてしまった。底は水がわずかに流れている状態だったので、幸い足は濡らさずに済んだ。
この落とし穴はかなりの深さがあり、背中には荷物、足にはスノーシューがついているため、這い出すのにちょいとばかり苦労した。
幕営指定地は、行けば分かるだろうと思って詳しい場所は調べてこなかった。いずれ山ノ鼻同様ビジターセンター付近だろうと思いうろうろしたが、あたり一帯は深い雪野原。どこも指定地のような気もするし、違うようにも思える。結局、尾瀬沼近くにあったベンチ付近を整地し、テントを張ることにした。
フレームを通しテントを固定する段になって、張り綱が短か過ぎるのに気づいた。三期用テントのため、ペグを雪深く埋め込むほどの長さがなかった。
目を転じるとすぐ近くに桟橋があった。桟橋の丸太に張り綱を結びテントを固定した。

おかげで展望抜群の場所に幕を張ることになった。
寝袋に足を突っ込み、テントの入り口をいっぱいに開く。コンロに点火し熱いミルクティーをすすりながら、尾瀬沼の美しい夕暮れを眺め続けた。これほどの贅沢、ほかにあるだろうか。

黎明の尾瀬沼とモルゲンロートの燧ヶ岳
雪山の夜明けは劇的だ。曙光を浴びた白い山頂が、清楚なピンク色に染まり、しだいに 輝度を増し白銀に輝いていく。 このわずか数分のドラマを見るため、長く寒い山の一夜を過ごすのである。

テントを撤収し、三平下目指して、尾瀬沼の上を進んだ。夜明けの頃は快晴だった空も、みるみるうちに暗雲が垂れ込めてきた。
三平下の尾瀬沼山荘の階段の下で食事をしていた人から、こんにちわと声をかけられた。その方も昨日入山し、長蔵小屋の冬季小屋まで行く予定が時間切れとなり、ここでビバークされたとのことだった。
昨晩、尾瀬沼に居たのは私だけではなかった。
この方と私以外にもトレースが見受けられた。昨日、日帰りで尾瀬沼を訪れたパーティがあったようだ。つぼ足で歩いた人も多かったようで、いたるところに木道の間を踏み抜いた跡があった。
三平峠から降り始めると、時折笛を鳴らしながら単独行の男性が登ってきた。この方も熊の足跡に気づいており、警戒しながら登ってこられた
大清水間近で、軽登山靴の登山者二人と出会った。この時期の尾瀬に入るには、少々危ない出で立ちだ。これから尾瀬沼まで往復するには時間が足りないと思われたが、この付近を散策しているだけかも知れない。念のため熊に出会わないよう、なるべく大きな声で会話しながら歩くようお勧めした。
帰りはトレース上を歩いたため、スノーシューを装着した状態でもコースタイムより早く、楽々と大清水まで帰着できた。トレースがあるとなしでは、苦労は大違いである。