尾瀬・岩塔ヶ原

父と娘の尾瀬・岩塔ヶ原スノーハイク

悠々独歩 No.53 2002/05/03〜04

3日 鳩待峠−山ノ鼻−猫川二俣(天幕設営)−右俣と左俣を分ける尾根より岩塔ヶ原往復
4日 幕営地−山ノ鼻−鳩待峠

だれも知らない尾瀬の山奥
清らかな川 ヤブを流れる
ホラリホラロ イワナがはねる
森のかなたには明るい緑の原
たわむれ遊ぶのはクマとカモシカだけ
岩塔ヶ原、夢の盆地明るい別天地
山をさすらうわれらの心の古里

これは西丸震哉氏の岩塔ヶ原賛歌の一節です。(実業の日本社刊 「西丸震哉の日本百山」より引用)

西丸氏の著作には岩塔盆地に関する記述が多く、このような詩まで残していることから、氏の最も好きな山域ではないかと推察しております。さらに西丸氏はこの地をテーマにした「ニチャベッタ姫物語」を、自ら愛情をこめて書いた数少ない本のひとつ、とまで書いております。国内のみならず世界各地の人跡未踏の山地を歩いた、極めてユニークな野人の一番のお気に入りとなれば、行ってみたくなるのは当然です。

実は一年前尾瀬から平ヶ岳を山スキーで往復した際、帰路にこの付近を通過したのですが、1/25000の地図には岩塔ヶ原や岩塔盆地などの記載はなく、スキーで滑り降りたこともあり、知らないうちに通り過ぎてしまいました。滑ることに気をとられ、より大切なものを見過ごしてしまいがちなのがスキー山行の欠点です。そんな心残りもあって、この連休はこの辺りを時間をかけて、じっくりとスキーで散策しようと考えていました。

学校の自然愛好会に所属している中学三年の佳純(一人娘)も西丸氏の著作を好んでいて、同行をせがみました。となると私だけ滑り降りるわけに行かず、今回はスキーは持たずに親子二人でスノーハイクをすることになりました。

(注)猫又川は西丸震哉氏の意向に従って、猫川と記述しました。

5月3日

猫川二股にテントを張る
山ノ鼻より猫川沿いに遡り、猫川二股のすぐ近くにテントを設営した。

写真は夕方撮影したもの。

今回の山行のためテントを新調した。今期モデルチェンジし軽量化されたモンベルのステラリッジ3人用である。佳純にとって初めての雪中キャンプとなる。

猫川左股のスノーブリッジを渡る
テント設営後、身軽になって岩塔ヶ原に向かって出発。

二股より200mほど左俣上流にあるスノーブリッジを渡る。暖冬のためこのスノーブリッジが残っているか懸念していたが、昨年のものより大きかった。水量は去年よりはるかに多い。

ここから、右俣と左俣を分ける尾根に取り付いた。

大白沢山を望む
尾根上より大白沢山を望む。

昨年はあの山のてっぺんにテントを張った。

木々の間から岩塔盆地
樹々の間に雪原が見え隠れする。この付近から岩塔盆地に降り立った。

瞳ヶ原?
白い雪原にて。

ここが瞳ヶ原?

さらに東に進み岩塔を探す。岩塔ヶ原の岩塔とは、西丸氏が航空写真から岩塔らしきもの見つけたことに由来する。氏が確認のため現地を訪れたところ、それは岩ではなくびっしりと詰まった大木であることが判明した。

岩塔ヶ原の岩塔?
丘の上に樹木の密生したところを見つけた。
これが岩塔ヶ原の岩塔?

瞳ヶ原にしろ岩塔にしろ、「西丸震哉の日本百山」に記載された大雑把な略図だけが頼りなので確たる自信はない。しかし地点を確認する作業など、どうでもいいような気がしてきた。そこに行ったというだけなら、ただの観光旅行と同じである。この地に溢れる光や水の音、木々の匂いなど、より深く感受することの方が大切だ。

長女 佳純
その中に分け入り、しばし時を過ごす。

丸い虹
空を見上げると、太陽を中心に虹が真円を結んでいた。

これよりカッパ山を目指すつもりでいたが、娘は疲れたから待っていると言う。カッパ山まではひと息の距離であるが、西丸氏によるとこの一帯は異次元との接点であり、不可思議現象が多発する場所であるという。そんなところに娘一人残して行くわけにいかないので、カッパ山は次回の楽しみにとっておく。

岩塔ヶ原1
岩塔ヶ原を流れる沢のほとりにて。
我が子も驚嘆の声をあげる透明な水の流れ。

ここが猫川右俣(枝沢)の源流地点。これより上部、沢は伏流となっている。

岩塔ヶ原2
樹木の間より、至仏山。

やがて雪が融け、池塘が現れ花が咲き、イワナが跳ねる頃、ここは夢の楽園となるのだろう。残念ながら私たちが足を踏み入れることができるのは、湿原が雪に覆われ、雪に保護されている時期だけである。

それでも、私も佳純も岩塔ヶ原の心地よさに心酔した。怪談めいたことなどおきそうな気配はなく、耳を澄ませば林の中から魔法の笛の音が、また煌くせせらぎはグロッケンシュピールの楽の音を奏でているように聴こえた。

景鶴山を望む
再び尾根に上がり、岩塔盆地に別れを告げた。

とがった頂は景鶴山。

尾根には、往きには見られなかった数本のシュプールがあった。

キャンプサイトに戻ると愛らしい小鳥の鳴き声。娘はMP3プレーヤーで録音しようと試みるがうまくいかない。

4時半、食事の支度を始める。ご飯とカルビ焼肉の缶詰、それにコンビニで仕入れた冷凍味噌煮込うどんにやさいを追加し、最後にご飯と生卵で雑炊にした。私にしてみれば豪華な山の夕食だった。

昨晩ほとんど寝ていなかったせいか食後睡魔に襲われ、天幕が夜の帳に包まれる前に深い眠りに落ちた。

5月4日

朝食
目覚めると、午前2時。湯を沸かし紅茶を飲みながら夜明けを待つことにした。佳純は安らかな寝息をたてている。外にでると淡い雲を透しておぼろげな月が輝いていた。この分なら天気は持つかなとも思ったが、夜が白々と明ける頃小雨が降りだしてしまった。再び寝袋に入り2度寝してしまう。

午前7時過ぎ「まだ起きないの?」と娘に起こされる。

今日の朝食はサラスパとフリーズドライの野菜ミックス、それにEvふえるふえるブロッコリー入りのトマトスープである。これはイケル!特にEvふえるふえるブロッコリーは味、食感とも本物に近いので山で使える便利な食材だ。

テント撤収
小雨降るなかをテント撤収。

天気が良ければ、日埼山かススヶ峰を往復するつもりでいたが、中止とした。

娘は一刻も早く風呂に入り汗を流したいと言う。まだまだ修行が足りないようだ。おまけに私が小用後、手を洗わないと言って怒り出した。まるっきり修行が足りないようだ。

猫川沿いを歩く
猫川沿いに往路を戻る。幸い雨は上がった。

山ノ鼻はスニーカーを履いた観光客で賑わっていて、夢から現実に戻された。ここには自然の霊気は微塵も感じられなかった。


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